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熱対策理論③:熱界面材料の主要な特性

1.熱特性

界面材料の主要な特性として、熱インピーダンスと熱伝導率が挙げられます


1a.熱インピーダンス

これは、高温表面から界面材料を経由した低温表面への熱流に対する総抵抗の測定値です。熱インピーダンスは、ASTM D5470に従って計測されます。このテストの現行方式は、クランプ強度の高い環境でテストした高デュロメータ絶縁パッド材料に固有の方式ですが、この方式は液体コンパウンドや低デュロメータ材料で使用しても問題ありません。


熱インピーダンスは、何パターンかのクランプ強度でD5470 を用いて計測できます。これにより、図2 に示すような熱インピーダンス・プロットに対する圧力が生成されます。この種のデータを使用して、材料が表面に合致して接触抵抗を最小限に抑える能力についての情報を生成します。接触抵抗は表面の特性にも大きく影響されるため、この種のデータの取り扱いには十分な注意が必要です。テスト環境の違いによる影響を最小限に抑えるには、テスト対象となる材料すべてのテスト表面を同じにして、この種の作業を最適な状態で実行する必要があります。


1b.熱伝導率

ASTM D5470 を用いて計測した熱インピーダンス・データを使用して、界面材料の熱伝導率を計算できます。方程式(3)を再構成して方程式(5)を導きます。

熱伝導率

次に、方程式(4)に代入して方程式(6)を求めます。


熱伝導


方程式(6)は、図2 に示すように、均質性物質の場合、熱インピーダンス(Θ)のプロットに対する厚さ(d)が直線となり、その傾きが熱伝導率の逆数に等しく、厚さ0 の場合の切片が接触抵抗となります。材料のさまざまな層のスタック・アップにより、または異なる厚さの材料を用意することで、厚さを変えることができます。


熱伝導率
図2:熱インピーダンスと界面材料の厚みの相関




2.電気的特性


2a.電圧破壊

これは、特定のテスト条件下で材料が耐えられる電圧量の測定値です。この特性は、通常ASTM D149 を用いて計測します。この場合、テスト標本はDC電圧傾斜の影響を受けやすく、テスト開始から20 秒以内に絶縁破損に達します。 5つの標本をテストし、電圧破壊の平均値を計算して報告します。この値は平均値であり最小値ではありません。電圧破壊の値を絶縁破損発生時の標本の厚さで割ると、電圧破壊を絶縁強度に変換できます。このテストは、高電圧に対する材料の耐性を示しますが、実際の使用箇所における材料の長期的な動作を保証するものではありません。この値はいくつかの要因の影響を受けます。例えば湿度や温度上昇により、電圧破壊は減少します。これは、吸収された水分により材料の電気特性が落ちるためです。


テスト電極のサイズも電圧破壊の観察結果に影響します。テスト電極が大きくなると、一般的に電圧破壊の発生は少なくなります。部分的な放電がある場合や界面材料への機械的な負担がある場合も、電圧破壊が減少します。


2b.体積抵抗率

体積抵抗率は、材料の単位立方体における体積の電気抵抗の測定値です。ASTM D257 に従って、アクティブな部品とアース接続した金属ヒート・シンクの間で界面材料がどの程度漏れ電流を減らすかを体積抵抗率により示すことができます。電圧破壊の場合と同様、体積抵抗率も湿度や温度上昇により大幅に減少する場合があります。



3.エラストマー特性

界面材料は、典型的な高充填エラストマーの特性を示します。これはいわゆる圧縮たわみ、圧縮永久ひずみ、および応力緩和です。


3a.圧縮たわみ

圧縮たわみは、材料がたわむ際に生じる合成力です。圧縮荷重を加えると、エラストマー材料が変形しますが、材料の体積は変わりません。圧縮たわみの特性は、部分的な形状(厚さ、表面積など)、たわみの度合い、プローブのサイズなどにより異なります。


3b.応力緩和

界面材料に圧縮荷重を加えると、まずたわみが発生し、その後圧縮荷重を解除すると徐々にたわみが緩和していきます。このプロセスは、圧縮荷重が材料の結合力によって均衡になるまで続きます。


3c.圧縮永久ひずみ

圧縮永久ひずみは、応力緩和の結果として発生します。材料が圧縮荷重の影響を長時間受け続けると、たわみの一部が半永久的になり、加重を解除しても元に戻らなくなります。