はじめに
電子機器パッケージングにおける熱対策の目的とは、半導体の接合部から周囲の環境へ効率的に熱を逃がすことです。このプロセスは以下の3つの主要な段階に分けられます。
1. 半導体部品パッケージ内の熱伝導
2. パッケージからヒート・ディシペータへの熱伝導(初期ヒート・シンク)
3. ヒート・ディシペータから周囲の環境への熱伝導(最終ヒート・シンク)
通常、最初の段階(上記1.)においてはパッケージの種類によって内部の熱伝導プロセスが決まるため、システム・レベルのサーマル・エンジニアの制御の範疇ではありません。パッケージ・エンジニアの目標は、残り2つの段階について、パッケージ面から最初のヒート・スプレッダ、さらに周囲環境への効率的な熱伝導を設計することです。この目標を達成するには、熱伝導の基礎と使用可能な界面材料について、また主な物理特性が熱伝導に及ぼす影響についての深い知識が必要です。
基本理論
材料における熱伝導率は、熱流に対して正常な領域と熱流経路に沿った温度勾配に比例します。1次元の安定した状態の熱流の場合、熱流量は以下のようなフーリエの方程式で求めます。
以下のような意味があります。
k = 熱伝導率 (W/m-K)
Q = 熱流量 (W)
A = 接触面積
d = 熱流距離
ΔT = 温度差
熱伝導率(k)は、材料の熱伝導能力を説明する均質性物質固有の特性です。この特性は、材料の大きさや形状、方向には関係ありません。ガラス・メッシュやポリマー・フィルムで補強されている非均質性物質の場合、熱流に関する熱伝導率は層の相対的な厚さや方向によって異なるため、「相対的熱伝導率」という呼び方が適切と言えます。
材料のもう1つの固有の熱特性は、以下の方程式 (2) で定義される熱抵抗(R)です。
この特性は、特定の厚さの材料が熱流にどう抵抗するかを測る基準となります。k とR の関係は、方程式 (2) を方程式 (1) に代入して方程式 (3) を求めることで表します。
方程式 (3) は、均質性物質の場合、熱抵抗が厚さに直接比例することを示しています。非均質性物質の場合、通常は厚さが増すほど抵抗も増えますが、必ずしも比例するわけではありません。
熱伝導率と熱抵抗は、いったん熱が材料に伝わってからの材料内の熱伝導を説明するものです。表面が完全な平面だったり、滑らかであったりすることは現実にはないため、表面と材料の接触面で熱流に対する抵抗が発生する場合もあります。図1 に、微細な表面の非均質性と、目視確認できる表面の歪みを示します。実際の接触は高点で発生するため、溝の位置に気相が残ります。
気相は熱流に抵抗するため、熱の伝導においては接点を通過する熱の量が増えます。このような圧縮抵抗は「表面接触抵抗」と呼ばれ、物体の面接触において常に起こりえます。
材料のインピーダンス(θ)は、材料の熱抵抗と材料/ 接触面の接触抵抗を合計したもので、以下の方程式 (4) で定義されます。
接触抵抗に影響するのは、主に表面の滑らかさ、粗さ、クランプ圧力、材料の厚さ、および圧縮率です。これらの表面の状態は用途により異なる場合があるため、材料の熱インピーダンスも用途によって異なります。