熱伝導率と熱インピーダンス|TIM選定に関わる熱特性

電子機器に使用する半導体パッケージの高集積化に伴って、発生する熱に対する対策が欠かせなくなっています。熱対策の手段としては、ヒートスプレッダやヒートシンクなどの放熱部材への伝達が一般的であり、半導体チップで発生した熱を効率的に伝えるために「TIM(Thermal Interface Material)」が必要不可欠です。
TIMを使用/選定する際には、熱特性についての基礎知識が必要です。ここでは、熱伝導率と熱インピーダンスについて解説した上で、TIMの種類や作業性について紹介します。
TIMの特徴
電子部品で発生した熱を下げる際には、一般的にヒートスプレッダやヒートシンク、外装筐体などの放熱材に熱を伝導させて放熱するという手段を取ります。TIMは、発熱部にあたる半導体チップと放熱材の間に実装されます。

TIMの使用目的
もし仮に、発熱体を放熱部材に直接接触させた場合、マクロレベルでは接触しているように見えても、ミクロレベルでは表面の微細な凹凸によるエアギャップが界面に存在します。このエアギャップは非常に熱伝導率が低いため、発熱体からの熱はエアギャップを避けて伝わり、非効率な放熱となります。この問題を解消するため、TIMを用いてエアギャップを埋め、効率的に熱を伝搬させる必要があります。
TIMは発熱体と放熱部材の材質や表面形状などを考慮し、また熱伝導に関する特性だけでなく、柔軟性や作業性などにも着目して選定する必要があります。

熱伝導率と熱インピーダンス
TIM選定でまず着目すべきなのは、熱の伝搬に関わる熱特性であり、熱伝導率と熱インピーダンスについての理解が欠かせません。
熱伝導率
熱は、伝導や対流、放射によって温度が高いところから低いところにのみ伝わり、その逆は起こりません(熱力学の第2法則)。部材を移動する熱エネルギーは、フーリエの方程式から算出できます。

熱伝導率は、熱の伝わりやすさを表す数値であり、物質固有の値です。熱伝導率が高い材料ほど、熱の伝搬速度が速くなるため冷却効果も高まります。
熱インピーダンス
材料の熱特性を示す指標には、熱伝導率の他に熱抵抗があります。熱抵抗は、以下の計算式で求められます。

熱伝導率が一定の場合、熱抵抗は材料の厚さや個体同士が接触している伝熱面積に依存します。
しかし、部材表面に微細な凹凸面がありエアギャップを形成するような接触界面がある場合は、部材同士の接触面で熱流に対する抵抗が発生します。部材自体の熱抵抗と、部材同士の接触界面で発生する熱抵抗を合計した総抵抗(熱インピーダンス)を考慮することが必要です。

熱インピーダンスは、高温部の表面から低温部の表面に流れる熱の流れに対する総熱抵抗です。したがって、熱インピーダンスθは以下の計算式となります。

TIM選定には熱解析や評価が必要
接触界面の熱抵抗を下げるために、TIMには厚み方向での高い熱伝導率と同時にエアギャップを埋める柔軟性が求められます。
TIMのカタログスペックには熱伝導率が記載されています。しかし、熱伝導率は物質固有の値であるため、実際の熱設計では接触界面の熱抵抗を含めた熱インピーダンスを考慮する必要があります。
熱伝達率は熱インピーダンスには換算できません。また界面の微細な凹凸の状態により熱インピーダンスは変化します。TIMを使用した熱対策には実機評価やシミュレーションが欠かせません。
TIMの種類と作業性
量産において、TIMを使用して熱インピーダンスを低減するためには、熱伝導性能だけでなく、TIM取り付け時のばらつきを極力抑えて接合面の凹凸を埋める必要があります。そのためには、TIM実装時の作業性も重要です。ここでは、TIMの種類や作業性について紹介します。
TIMの種類
TIMには以下の表のようにさまざまな種類があり、使用状況に応じて使い分ける必要があります。
| TIMの種類 | 特徴 |
|---|---|
| サーマルグリース |
|
| 熱伝導シート(ギャップフィラー) |
|
| サーマルゲル |
|
| PCM(Phase-change materials) |
|
| サーマルテープ |
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| 高熱伝導接着剤 |
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| はんだ |
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TIMの作業性
TIMは、製品タイプによって作業性の違いがあります。また、TIM実装時のばらつきによってエアギャップの除去が不完全であれば、熱伝導率の割に期待したほどの熱対策効果を得られないこともあります。
例えばサーマルグリースは、流動性が高く薄膜化が容易というメリットがありますが、均一塗布が難しく作業性が悪いというデメリットがあります。熱伝導シートは、段差が大きい場所の使用に優れておりリワーク性も高いですが、硬度が比較的高いため圧縮力が不足していると熱対策効果が得られません。このように、TIMは材料によって作業性が異なり、実装後の熱対策効果に影響を与えます。
また、TIM材料は使用する場所の熱サイクルによるポンプアウトや、連続使用によるドライアウトの発生もあるため、使用前に作業性も含めた評価が必要不可欠です。
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