熱対策理論②:熱界面材料(TIM)

半導体により発生する熱は、周囲の環境に逃がし、部品の接合部の温度を安全な動作が保障される範囲内で維持する必要があります。このような熱除去の処理は、多くの場合、周囲環境へのより効率的な熱伝導を可能にするための、パッケージ表面からヒート・スプレッダへの熱伝導を伴います。このスプレッダはパッケージへ慎重に接合し、新たに形成した熱接合部分の熱抵抗を最小限に抑える必要があります。


ヒート・スプレッダを半導体パッケージ表面へ取り付けるには、表面同士を密接に接触させる必要があります。通常これらの表面は、目視確認できる非平面性と、顕微鏡でしか見えないほどのわずかな表面の粗さを特徴とし、表面は凹凸またはねじれた形状をしています。このような2つの表面を接合すると、高点でのみ接触が発生します。低点では気相が発生します。通常接触面は90 パーセントを超える部分が気相で、熱流に大きな抵抗が発生していることを示します。


熱伝導材料を使用すると、粗くて不均一な接合面と合致することで、このような表面間の空気間隙を界面から除去します。材料自体には、空気よりも大きな熱伝導性があるため、接合部全体の抵抗が減り、部品の接合部の温度も下がります。電子部品パッケージング市場のニーズの変化に応じて、さまざまな種類の材料が開発されています。これらの材料は、以下のように分類できます。


相変化材料

THERMFLOW® 材料は、シリコーンまたはその他のポリマー樹脂で構成され、熱伝導性フィラーが混合されています。これらの材料は、グリースの高い熱性能と、パッドの扱いやすさと「剥がして貼れる」用途を兼ね備えています。これらは高性能のマイクロプロセッサ、グラフィック・プロセッサ、チップセット、ヒート・シンクなどに使用します。


  • 0.3℃- cm2/W 以下の熱インピーダンスを実現できます。
  • 熱経路の厚さを最小限に抑える動作温度に合わせています。
  • 表面の適度な「濡れ性」により接触抵抗をなくします。


相変化材料は、溶解温度(通常45~55℃)に達すると熱グリースのような働きをします。この温度になると粘度が急速に減少して熱接合部に流れ込み、最初にあった隙間を埋めていきます。この処理には、2面を接合して材料が流れ込むようにする圧力(通常、数psi)が必要です。この処理は、最低3点で2面が接触するまで、または接合部の厚さが増して、材料の粘度によりそれ以上流れなくなるまで続行します。本来、これらの材料は2面を密着させる場合もあるため電気絶縁性はありませんが、さまざまな誘電体膜を利用できます。これらの材料は、優れた長期的な信頼性と性能を実証しています。

サームフロー 相変化パッド


ポリマー/ はんだハイブリッド型

THERMFLOW®の材料には低溶融合金フィラーが混合されています。これらのフィラーは65℃前後の温度で流れ、接着ラインの最小厚さにおいて0.1℃-cm2/W 未満という極めて低い熱インピーダンスを実現します。


熱テープ

THERMATTACH®テープは、アクリルまたはシリコーンをベースとする感圧接着剤(PSA)で形成されていて、熱伝導フィラーが混合されています。これらのテープは、付加的なクランプ・メカニズムを必要とせず、安全にヒート・シンクを電力分散部品に接着します。


  • 金属またはセラミック・パッケージ向けのアクリル・ベース接着剤
  • プラスチック・パッケージ/ ヒート・シンク接着用のシリコーン・ベース接着剤
  • 部品パッケージ内やプリント基板での用途に適した純イオン性の接着剤です。
  • 限られた隙間を埋める特性を生かすには、表面がある程度滑らかである必要があります。
  • 温度上昇時の高いせん断強度


熱テープは、主にその機械的な接着特性が利用されます。また、熱特性もある程度利用されます。これらのテープの熱伝導率は中程度で、使用部分の熱性能は、接着面の接触面積により異なります。

熱伝導両面粘着材 サームアタッチ・テープ


ギャップ・フィラー

THERM-A-GAP™ギャップ・フィラーは、低係数(ソフト)の熱伝導性シリコーン・エラストマーで、半導体部品と熱分散面の間にある広範囲のさまざまな隙間での熱伝導が必要な用途に適しています。


  • ソフト・シリコーン・ジェル結合剤は、低圧で適した低係数を実現します。
  • 低係数により、材料が公差の大きなスタック・アップも補います。
  • 低圧用途


ギャップ・フィラーを使用して、高温部品と低温表面の大きな隙間を埋めます。このような場合の隙間は大きいだけでなく、公差が±20 % 以上になることもあります。つまり、ギャップ・フィラーには、部品に安全性の限界を超える負担をかけることなく、このような空間を埋める十分な応力が必要となります。非シリコーン・ギャップ・フィラーは、シリコーンの慎重な取り扱いが必要な部分に使用できます。熱特性とRF 吸収特性を組み合わせたハイブリッド型のギャップ・フィラーも使用できます。


ギャップ・フィラーは、0.5mm ~ 5mmのさまざまな厚さのパッド形式で提供されています。また複雑な形状にも溶接できます。これらのギャップ・フィラーは、プレキュア型の一体構成コンパウンドで、熱生成部品に塗布できます。


これらの独自の材料により、もっとも柔らかいギャップ・フィラー・シートよりも、精密な部品への機械的な負担が大幅に減少します。これらのギャップ・フィラーは、複数の部品と共通のヒート・シンクのさまざまな隙間を埋めるのに適しています。

コ・サーム ギャップフィラー


Form-In-Place コンパウンド

THERM-A-FORM™コンパウンドは、反応型の2 成分シリコーンRTV(室温加硫材料)で、部品と低温表面の差が大きく変わる部分の熱経路形成に使用できます。これらのコンパウンドを部品に塗布すると、複雑な形状にも容易に適合し、適切な位置で硬化します。


  • 低係数のセラミック充填コンパウンド
  • 部品に負担をかけることなく0.005~ 0.25 インチの範囲の隙間を埋めます。
  • 室温でも硬化します。
  • 部品の位置を決めて密封できます。
熱伝導コンパウンド サーマギャップ


絶縁パッド

CHO-THERM® 絶縁パッドは、分散した電源装置とヒート・シンクの間に使用するために、利用者にやさしい、グリース式MICA 絶縁体の代用品として開発されました。


  • シリコーン結合剤は、高温でも安定し、良好な電気絶縁特性を発揮します。
  • ガラス・メッシュの補強により、カットスルー抵抗を実現しています。
  • 接触抵抗を最小限に抑えるのに必要な高い装着圧を実現しています。
  • U.L. 認定の難燃性評価


このクラスの製品は、高い熱伝導率、非常に高い絶縁強度と体積抵抗率が特徴です。パッドは分散した電源用半導体からヒート・シンクへ非常に広範囲の熱負荷を伝導すると同時に、使用の部品ケースとアース接続したヒート・シンクの長期的な電気絶縁を実現する必要があります。

コ・サーム 熱伝導絶縁パッド

熱グリース

熱グリースは、シリコーンまたは炭化水素油で構成され、熱伝導性フィラーが混合されています。これらは粘稠液で、通常はヒート・スプレッダまたはヒート・シンクにステンシル印刷またはスクリーン印刷されています。グリースの表面は適度な濡れ性が保たれていて、界面を流れて気相を簡単に埋めることができます。その結果、使用部分の圧力が低い場合でも熱インピーダンスが低くなります。


熱伝達ジェル

熱伝達ジェルはシリコーン・ベースの結合剤であり、熱伝導性フィラーが混合されていて、架橋結合により低係数のペーストを形成できます。このジェルの一致性能は高く、グリースのように熱インピーダンスを低く抑えますが、グリースの脱水や乾燥の問題も克服するよう設計されています。

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